マイナスの財産の調査方法
相続財産というと現金や預貯金、不動産など、プラスになるものを思い浮かべるかもしれませんが、被相続人が生前から抱えていた借金などの債務も相続の対象となります。
「相続放棄」を選択すれば借金の支払い義務から法的には逃れられるものの、同時にプラスの財産も相続できなくなります。それゆえ相続に際しては被相続人の全財産の状況をしっかりと把握し、判断する必要があるといえます。
しかしながら、プラスの財産以上に詳細をつかみにくいのがマイナスの財産です。
借金があることはあまり人に知られたくない事情ゆえ、被相続人が相続人のためにきちんと記録している可能性は低く、債権者からの通知によりはじめて知ったという方も少なくありません。
また、借り入れ先は一箇所だけだと思っていたのに、複数の消費者金融から借金していたという事実が相続手続き後に発覚するケースもあります。
知らないうちに借金を背負うことになると、人生に大きな影響を与えかねません。
被相続人が債務を抱えている可能性や一箇所でも借金があることがわかったら、負債の調査を行うようにしましょう。
個人信用情報の開示請求
ローンの契約をしたり、クレジットカードを利用したりすると、客観的な取引事実としてその情報は記録されます。その記録のことを信用情報といいます。
信用情報は系統により3つの機関によって管理されており、相続人であれば被相続人がどのような取引をしていたかを確認するための開示請求を行うことが可能です。
正規の業者であれば下記に記載する個人信用情報機関に加盟しているので、そのすべてを調査すれば借金の有無についてもわかるでしょう。
- (株)日本信用情報機構(JICC)…消費者金融系
- (株)シー・アイ・シー(CIC)…クレジット会社系
- (社)全国銀行協会(全銀協)…銀行系
上記3つの機構については郵送にて開示請求を行うことができます。
請求にともない下記の書類提出が必要ですので、準備しておきましょう。
信用情報開示請求に必要な書類
- 各機関の信用情報開示申込書
- 本人確認書類
- 法定相続人であることがわかる戸籍謄本
- 本人の戸籍謄本
- 開示手数料 等
信用情報に載らない負債
消費者金融の利用やカードローンの残高については信用情報を調べればわかりますが、マイナスの財産のなかには信用情報に載らない負債も存在します。
個人からの借金や公共料金の未払い分などは信用情報機構では調査ができませんので、亡くなった方の自宅内を整理し、督促状等がないかを確認しましょう。
また、連帯保証債務についてはその存在を把握することが一層難しくなります。
特に被相続人が法人の経営者であった場合、会社の負債について本人が保証している可能性も高いため、保管している契約書を一通り確認してから相続の判断をしたほうが賢明です。
調査結果により相続放棄を選択する場合、家庭裁判所での手続きが必要になります。
相続放棄には「相続の開始を知った時から3か月以内」という明確な期日の定めがあるため、期日を過ぎることがないよう、早めに開示請求に取りかかることをおすすめします。